天井の“耐震診断”などできるのか?

天井を安全安心化するための手法の一つに、想定した地震による力を受けた場合に、その力に耐えられるように補強を行う天井の“耐震化”という手法があります。ある程度の地震動までは壊れません、というものです。では、壊れた後はその天井はどうなるのでしょう。実はこの壊れ方も大変重要で、壊れたとしても大規模に崩落しないように、耐震化とは別に落下防止対策や軽量柔軟化などを施しておかないと、地震の後に「想定の地震動を超えていました。壊れて落ちても仕方ありません…。」という弁明を聞くことになります。

 

納得いかない、として提訴しても、適法であったかどうか(違法行為の有無)?や善良な専門家が配慮すべき事項(善管注意義務)が守られていたか?などの証明に多大な時間を費やし、必ずしも被害者が救済される判決に至らない場合も多いと思われます。

“天井の耐震性”を評価するには、そもそも設計者が天井にどのような性能を持たせることを計画したか、それを実現する方法をどのように図面化し、計算書でどのような事項について確認し、それをどう管理し施工したか、まで分からないと、現物を見てこれは良い、これは悪い、と判別できるものではありません。

天井を調査した際に知ることができるのが、下地材の腐食の有無や劣化、損傷の有無、また地震力を受けた際にどのように天井に力が流れ(力の大きさはわからない)、どのように天井が揺れようとするのか?天井はどうやって支持されていて、その支持方法は地震その他の力によって、天井が落ちるような事態を引き起こす可能性があるのか?程度までなのです。

天井の耐震化を促す基準類が出始めたのが2001年ごろからで、それも法的拘束力のない“技術的助言”として各行政庁に発せられた展開情報があるにすぎません。したがって2001年以降も、天井の耐震化の重要性や対策方法が公知の事実になっていたかというと、おそらく司法上はそうではないという判断もありうる状態だったといえます。

 

2011年の東日本大震災によるおびただしい数の天井落下は、この状態を覆すに十分な犠牲を払いました。

その5年後、ようやく“特定天井”に対する天井耐震化の義務付けが建築基準法告示として制定され、天井落下防止手法は公知の事実化をしました。

 

結果、これに照らして天井を調査診断する際に、既存不適格の指摘がほぼすべての天井に当てはまることになるのです。また、“特定天井”ではない天井の耐震性を評価する際にも、天井は設置した天井高さによって耐震性が変わるわけではないため、本来はこの告示に示された方法に対しての過不足程度しか評価することができないのです。

 

果たして、“天井耐震診断”を行います、などと謳って業務を行っている団体が多数ありますが、これ以外に評価を行う方法があるのであれば、是非ご教授いただきたいところであります。

我々は、天井の調査を行う際に、

 

・現行基準「国交省告示第771号及び778号」に照らして、当該天井の現状の評価

・建築学会ガイドライン※1に照らして、当該天井の現状の評価

・劣化、損傷状態の確認

・その他天井の安全性を損なう事象の有無(残材の放置、漏水の有無、地震以外の外力の懸念事項の有無、天井敷設設備の状況、など)

 

※1「天井等の非構造材の落下に対する安全対策指針・同解説」についてレポートし、当該室の用途、規模、災害時の使用状況などにかんがみて、内在リスクの洗い出しを行います。また、関連官庁からの“技術的助言”等の参照すべき情報からのリスク評価を行います。

 次に、当該天井の更なる安全安心化のための方法についてコンサルティングを実施します。

 

・地震その他の外力に対する当該天井に求める性能(機能維持性)の設定

・建物寿命、使用用途などから、ヘッジすべきリスクの洗い出し

・上記を実現する工法の提案と見積

・図面化協力

 

「天井を診断してほしい」、の背景には、問題があった場合はどのように直せばよいのか?それはいくらかかり、工期はどうなるのか?放置するとどうなるのか?などの情報が必ず必要になることと考えます。そのためには、点検・診断業務だけでなく、その後の改修すべき最適な計画の提案までがセットで提示されなくてないけません。

どのみち、“天井耐震診断”を行ってもNGになることが分かっていて、こういう方法で耐震化できます、こんな工法があります、と自社商品を売り込むだけの仕組みでははなはだ不十分だと考えます。

治すなら、どんな性能やどんな状態で震災後を迎え、どのように施設の機能を回復していくか、までをデザインし実現しないと、その施設に最適な天井の計画は行えません。

そのためにも、ごまかしのない、確かな信頼性を持った天井のラインナップと、建築設計などの経験も積んだ技術スタッフの介在が欠かせません。

SOMENOの天井は、一切の妥協を許さず、タブーを打破し、次の世代の天井あり方を追求してまいります。天井を無くす提案まで恐れず行います。

“SOMENO REBORN”に込めた意気込みです。