染野の新規天井(ES天井SSS)の優位性について

⒈ 2011年東日本大震災で天井等の非構造材の地震による損傷・脱落が人的、物的に甚大な被害をもたらすことが顕在化し、国交省での政令天井としての法制化や、民間企業での耐震天井下地の研究開発が活発化しました。

その結果、現状では市場に出回る天井に「メーカー責任による任意の耐震天井」と「政令に定める「特定天井」」の2極化が進んでいます。

政令で定める「特定天井」は、吊天井を斜め部材(ブレース)と天井周囲のクリアランスで安全性を確保する方法なのですが、震度5前後を想定した「中地震動」に対し最大天井面で2.2Gの加速度を想定し、その時に掛かる力に対し弾性(スライド内参照)であることを求めています。一般的にメーカーが実験等で耐震天井をうたう場合、天井面に掛かる力を1.0G程度で算定してきた経緯があり、また、その力に対して弾性な状態で抗するだけの補強を行ってこなかったため、「メーカー責任による任意の耐震天井」と「政令に定める「特定天井」」の間には、性能信頼性の面で大きな隔たりが生じているのが現状です。

 

それを、高さ6m超、面積200㎡超の吊天井はやむなく高度な検討を要する「特定天井」として構成し、それ以外の天井はメーカーの言い分通りの任意の耐震天井を設置しているのです。

 

ところが、東京大学生産技術研究所川口健一教授が日本建築学会「天井等の非構造材の落下事故防止ガイドライン」で提唱した人体に及ぼす天井材の安全性評価に示されている通り、石膏ボードなどによる一般的な天井は、2mの高さから落下しただけでも頭蓋骨陥没骨折を誘発するほど危険性が高い、と言うことが公知の事実となっています。


2.標準的な耐震天井の加力試験結果と「特定天井」に関する技術基準である建築性能基準推進協会 建築物における天井脱落対策に係る技術基準の解説(平成25年10月版) に示された加力試験結果を比較しました。右の図のように、JIS材を用いた耐震天井(一般的なメーカー耐震天井)では、非常に慎重に計画し施工された場合でも、非常に荷重が小さい(グラフは水平慣性力で600N程度。一般的なボード天井でブレースの数に換算すると、1.0Gでも斜め部材(ブレース)を2㎡ごとに設けなくてはいけない程度)場合にしか弾性挙動に近い荷重変位関係を示すことができません。

 

一般的な耐震天井では、2㎡ごとに斜め部材を入れることは下地の構成上、物理的に不可能なため、非弾性挙動を示すグラフを用いて、最大耐力が高いので斜め部材をもっと少なくできる、と主張し、地震で部材のいずれかが塑性化し損傷するであろう天井を販売しているのです。


3.そこで染野製作所では、特定天井も一般の耐震天井を区別して耐震安全性のグレードを設ける、などという手法を否定し、いずれの場合も同様の根拠に基づく耐震安全性を明確に設ける商品企画を行うこととしました。

特定天井も、その他の天井であっても、頭上にある重たい天井を落としてはならない、という「当たり前品質」を確実に実現することが、新規商品の最も重要なコンセプトです。


4.JIS材が地震を受けた際に、必然的に内在する問題点を示しました。開発主担当の開発事業部責任者は、2011年以降ゼネコン技術研究所および東京工業大学元結研究室、染野製作所らと連携し、多数の実大試験、振動台実験を行い、天井下地の地震時の安全性について知見を蓄積してきました。その結果、前述の一般的な任意の耐震天井の実験値は、非常に慎重に計画・施工した理想的な環境の実験室でも、何体かに1体のみしか実現しない危うい性能であることを体感しました。誰もが容易に実現できる性能ではないため、より容易に、誰もが再現できる下地材への見直しが必須であるという結論に至ったのです。


5.そこで、JIS A 6517のように、焚き火のやぐら状に下地材を組んで構成する不安定な下地を脱して、重たいボード面に対し、縦横の材とも同じ高さ、同じ接合ができるT型の断面をした天井下地をベースとすることにしました。縦横材をつなぐ従来のクリップという部品(東日本大震災では、この部分の外れによる天井の大規模崩落が多数発生した)を使用せず、簡単に斜め部材が施工できる専用部材とビスで緊結されように外れない専用ハンガーを用いたES耐震天井下地を開発したのです。


6.ES天井では、建物の立地の特性(地域により地震の起きやすさや地盤の揺れやすさが異なる)、建物の揺れやすさ、天井を設置している階数、などに応じて、その部分の天井が耐えるべき地震時に天井に掛かる力に対して、グラフに示すような弾性挙動を、すべての染野耐震天井に適用することとしました。これは、他メーカーが特定天井はやむなく政令に定められた厳しい基準に適合させ、それ以外の天井を身近な保有材料で実現できる“自称”耐震天井で対応していることとは、本質的に大きく異なる点です。

 

要求品質に対し、きちんと計算に乗ることで複数の技術者の確認を容易にし、また、習熟度を問わず誰が施工しても性能が発揮できる天井、すなわちEASY STRONGな天井下地を供給し、安全安心を実現することを事業目的としています。